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人生と仕事が伸び悩んでるWeb系のおじさん

パラサイトのネタバレ前提の感想

ネタバレ前提で、どさくさに紛れてジョーカーdisる感想。

格差社会な映画だ。そしてしっかりエンタメだ。社会派というより、人間の話をきちんとする映画だとは思った。この映画、ともかく象徴的なのが↓のセリフだ。

「計画を立てるから失敗する、立てない限り失敗しない」(要約)

計画を立てることができないということは未来に対して明るい希望を持つことができないということであり、これはその日を生きるのに精いっぱいな貧困の象徴のようなセリフ。

このセリフを吐くシチュエーション、タイミングだってはまりすぎてるけど、この映画の話の全体と、あのオチにあった夢想が夢想でしかない、ということをさえしっかり示唆してくれている、とてもとても象徴的なよいセリフだと思う。重い。とっても好きだ。

自分はあのシーン、この台詞までがこの映画のMAXボルテージだった。あの家で大変な目にあいつつ、やっと逃げ出して帰った先の家があんな目にあう、逆流するトイレの上でスマホをいじる姉と、石を見つける弟くん、親父のつぶやき、辛みMAXでしたね。

やっぱり後半の、それも終盤の展開好きじゃないかも

こっからは文句なんだけど、映画がこう、メッセージとは言わなくともテーマを伝え終えるかのような、オチをつけるタイミングで、リアリティを度外視する箇所というものが基本的にあると思ってて、それはテーマへの意思が強いほど目立ってしまうことが多いし、社会的な映画ではかなり目立つ傾向にあるんじゃないかと思う。

例えば、それは、ジョーカーという映画がついた大きな嘘は、あのジョーカーが社会的な底辺の人間に一時でも祭り上げられるという「嘘」だと思う。彼はあの主張も含めてはっきり言ってカッコよくない、カリスマ性がないので、祭り上げられることへの説得力はない。貧者がテレビで富者を殺す、その「悪」のかっこよさ、テロリズムがかっこいいと思わせるだけの魅力がない、だから、反社会的な映画としてはとても弱い作品だと思った。あれを見てテロを起こそうと思う人はきっといないだろうと個人的には思う。ジョーカーのかっこよさについては、ヒットの度合いからして否、かっこよかった狂気があった、というのが答えなのかもしれませんが。

そしてこの映画、パラサイトの嘘ですが、それは血の惨劇と化す、あのパーティーにおいてです。富者たるあの父親が子供を病院へ運ぶための車の鍵にしか興味がない、死体を転がして臭いに顔をしかめるという「嘘」が個人的には目立ちました。あの金持ちの父親は、子供が大事、底辺のことなど知らない、自分の家族とその周りだけが大事、ということはあの映画から読み取れても、奴が残酷で非道徳的であること、というのは描写されていなかったと思う。大事なところなのに、すごくステロで世間的な古典的偏見、「富める者は残酷で貧者を同じ人と思わない」に全力でよりかかった戯画的なシーンに見えました。

それでも、この映画は、テロリズムルサンチマンの発露は主目的じゃないのだから、そこは大きな問題じゃない、ジョーカーほど白ける嘘じゃないのは確かです。

だけど、だからこそ、そもそもがあんな嘘つかなくて良いはずで、あんなものがなくても半地下に戻らされてしまう家族の現実を描けるんじゃないでしょうか。

話をおさめていくところがなんとも武闘派で苛烈で、それも個人的には、さっき言った納得感のない嘘でもって収まっていく様がとても残念でした。前半の彼ら家族の軽快な詐欺的なやりとりの数々が魅力的だったことも手伝って尚更残念です。

要は、違う結末を見たかった、というのが一番の不満です。終わりの終わり、締め自体は、とても良かったと思うんですが。

格差社会にチェケラァ

とまあ実はどっちかといったら好きではないけど、見た当日に感想書きたくなるくらい、エモな映画でした。アカデミー賞っぽいってことなのかもしれない。お気に入りといえるものは、やっぱりこの日記でも最初に話したあのセリフ、その時の状況も相まって最高に響いたし、あとあの家族の庭、ちょっと非現実的なくらいきれいで美しかった。半地下家族で並んで飲むシーンとか美しかったね。下界と隔絶されてる感が出ててすごい良かった。頭突きモールス信号おじさんがスイッチで旦那のために照明付けるところとか良いよね。何度か話題になる半地下の匂いの話も、なかなかのパンチ。

万引き家族、ジョーカー、半地下を見て、君も格差社会というテーマにコミット、チェケラァって感じ

続く

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