全くもって自分のせいではないのだが、やんごとない理由によって貯金が吹っ飛んだ日が先週の水曜日の夜だった。
次の日は、休んだろか思うほど気持ちはキレ(二つの意味で)そうだったが、なんやら休みを取る上長の代役があったし、飲み会に誘われて出社までしたのであった。
職場ではニコニコしていた。君がだんだん図々しくなってきてボカァ嬉しいよみたいなことをエロい人が話しかけてきた。ずいぶん話したが、仕事好きそうでいいなこいつと俺は思った。俺も仕事は好きだから、こいつみたいにもっと好きになりたいなと思った。
飲み会は楽しかった。うまいこと聞き役にも話し手にもなるやつらで俺含めて常識人すぎるなとおもった。そのうち1人がなんか辞めたいらしかった。そんなのはとうのまえから予想してたが、替えの効かない人間だったから嫌だなと思った。
まあまあ飲んで酔っ払って家に帰る途中。ラーメンを食った。むしゃくしゃしていた。

ラーメン
次の日は休日であった。桃鉄みたいなキングボンビーサイコロショック喰らったストレスと二日酔いに歯ぎしりしながら、自転車のパンクを治しに行った。すると自転車屋の駐輪所でスマホを落とし、その場に立ち尽くした。先週画面を割って5万払ったばかりだった。
割れてはいなくて安心したのも束の間、店員と話しながらふとスマホをみると、モニターが一瞬レインボーになった。自転車屋のハゲのタイヤの説明が急に遠くなっていった。
意識を遠くしながら頷いていると、ハゲが受け取り用紙を渡してきた。今日じゃなくて明日でいいかとハゲに聞くとハゲはいいと言った。ハゲは営業時間を唱えだしたが、大丈夫だハゲと言うと(言ってない)俺はスマホをじっと見つめながらトボトボ歩き出した。モニターではなく内部、10万コースの破損と見えた。俺は家に帰るには遠回りな、小学校の登下校に使っていた道をわざわざ歩くことにした。
年に一度は通るくらいのその道は、少しずつさみしくなっていくように見えていたような年もあったのだが、今ははっきりと人流があった。登下校の時にあった自販機の釣り銭をパカパカかちゃかちゃして通った売店が潰れていても、新しいマンション、新しいお店の影があった。俺のスマホより、ハゲの毛量より、希望を感じる道に見えた。
道は栄えたり、寂れたりもする、俺の金も増えたり減ったりする、とかわけわかんないこと考えてたと思う。
途中、家の近くのスーパーで、メモした食材リストの写真を音楽プレイヤーにしていたサブスマホで見ながら買い物をした。食材の総額は、五千円に届いた。
家では半日かけて作り置きの飯を作った。12食分。
その日のものを作る、と言うだけでは正直楽しめなかった料理は今は楽しかった。作り置きで平日に楽ができ、かつ、血糖値スパイクしないような食事、そこらで買うよりうまい、ダイエットメニューでもある、かつ、なんか調子がよい。

だれうま
何より節約にもなる。料理は貧乏人の絶好の暇つぶしだと思う。作り終えたあとも次は何を作ろうかとレシピを眺めて幸せだった。スマホのことは忘れた。
ふと、Slackに評価シートの共有がされた通知が来ていて気づいてのぞいた。てめえの自己評価を書けということだった。
もしかして、俺はメンバークラスのグレードかとハラハラしていたが、リーダーと書いてあってほっとした。さすがに去年部長賞取った男だけあって、マネージャーじゃなくても、メンバーではないだろう。
貯金もないし、賃貸だし、車もないし、嫁もいない、ハゲてないけどチビだし、知性は感じるしユーモアがあると最近職場でよく言われるけどもてないし、そんな男がメンバークラスだったら可哀想じゃないか。
評価シートを眺めるのはそこそこに、俺は勉強を始めた。俺の最近のマイブームは料理と勉強だ。AWSの資格勉強して、仕事で使う3Dのあれそれを眺めてわかった気になって、パソコンをカタカタしてると眠くなってきて、仕上げにSlayTheSpire2をやって寝た。
次の日は、昨日作った作り置きをつまんでから、ジムに行き、1時間くらいゆるい筋トレと30分くらいのウォーキングをしたあと、スタバに出かけた。
スタバで本を読み、勉強するのだ。鉛筆カリカリ、受験勉強キッズだらけの地元のスタバだが、ガチでノートに書き出すのは俺的NGだったので、スマホで問題集を解きながら、飽きたら本を読むを繰り返した。
ふと、俺の席の斜め前で三宅香帆みたいな女がパソコンをカタカタしていることに気づいた。俺は、とたんに、三宅香帆みたいな女って悪口を誰かに披露したくて仕方がなくなった。
やつの本を読まずとも、あらゆる事象について、言語化する技術を人よりも少し上くらいのレベルで身につけている知性を持ったチビの俺は、三宅香帆みたいな女がスタバでMacBookをカタカタやってる姿を見てたまらなくなった。(※なぜ働いていると本は、名著である)
俺は、🌈が走るiPhoneでもなく、問題集を解いていたウィンドウがバリバリのサブスマホでもなく、とっておきのiPadProを取り出して本のメモするフリを始めようとしたが、充電がなかったせいでiPadProは応答してくれなかった。
俺はおとなしく本を読むことを選んだ。三宅香帆のMacBookのリンゴがキラキラしていた。負けたと思った。
家に帰って、また作り置きの弁当を食った。これはうまいと、今食べたものと同じものが3食分冷凍してストックしてあると思うと、また平日の毎日の食事が楽しみになった。
少し前までの俺ならここで昼寝を始めるのだが、今の俺は勉強を始めるのであった。
最近思うのは、何かをして楽しい気持ちになる行為も、勉強のような苦痛を伴う行為も、一人で完結するものであるならば、どちらも虚無であると。脳の信号であると。そして、どの虚無か選べと死神に言われて、俺は勉強をして、ジムに行って、料理をして、掃除をする、ということを選択するようになったのだ。そういう宗教を始めたのだった。