0.5人月

人生と仕事が伸び悩んでるWeb系のおじさん

ネクスト・ゴール・ウィンズの感想

サッカーより大事なことを説くサッカーのスポーツヒューマン映画

あらすじ

オーストラリアに31-0という歴史的な大敗をしたことでも有名な、世界ランク最下位国のサモア。このサモアの代表監督にアメリカ代表監督をクビにされた監督が飛ばされて、ワンゴール一勝を目指す実話をもとにしたサッカーの話。

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感想

あらすじ見るだけでこれ系なら面白いだろうなという感じがしますよね。この手の話は古今東西山ほどあります。ハリウッド映画とかだと特に得意な気がします。尺的にもドラマよりは映画向きだし、書物なんかよりは音楽含めて一気に話を受け手に聞かせたい、そんな体験だからこそ摂取できる栄養がある。そんな類の物語だと個人的には思うんです。

でも、そんなさもありなんな歴史スポーツ負け犬ストーリーでも、作品のテーマはそれぞれだと思うんです。そして、この作品から受け取れるテーマもやっぱり、単に「その手の作品」と片づけられないような熱さのある内容になっていました。

史実ですしネタバレにもならないと思うので言いますと、勝ったときの爽快感、カタルシスはいまひとつでテンポが良くなかったと個人的には思いました。道中もスポ根というには物足りないくらいには、両サイドが比較的大人で、衝突も露悪的になりすぎず、サラリとしています。また、タイカ・ワイティティ監督特有のギャグがひたすら続き、ギャグで主人公の心が動き出すかのように見える場面(※最後まで見た結果、実はそうじゃないと思いました)には、少しもじもじしたくなる時間もあります。

ですが、やっぱりテーマがあらわになるジャイアントキリング、勝利につながる主人公、チームのブレイクスルーは、そんないまひとつかもしれないスポ根カタルシス分を取り返して余りうるくらいの熱いものがあります。

最後の試合に挑む中で、主人公の喪失が明らかになるシーンが来るわけですが、その最後の壁にあたって、サモアサッカー連盟のトップのタビタが主人公にかける言葉が自分は大好きです。主人公は、やはりサモアでサッカー監督をやる必要があったのだということ、この映画だってサッカー題材じゃなくても同じテーマで作れたんじゃないか、いやでもサモアじゃないといけなかったんだという説得力すらありました。

サモアの気候よろしくとても暖かい映画になっていました。タイカワイティティ監督の描く喪失と救済の物語。スポ根というよりはヒューマンを感じたい人はぜひ、人生何も喪失してなくても身につまされるような部分もあると思います。