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人生と仕事が伸び悩んでるWeb系のおじさん

方舟、名探偵のいけにえ、爆弾を読んだ

爆弾、方舟、名探偵のいけにえ3作を比較しながら

2022年に売れたミステリ本を3作読んだ。読後感含めて断然面白かったのが方舟、これこそ本格ミステリだと唸ったのが名探偵のいけにえ、圧倒的映画ドラマ原作売れ線感を味合わせてくれるのが爆弾

方舟はともかく読ませるし読みやすいが推理を楽しむには弱い、名探偵のいけにえは推理こそが楽しいが他の2作にはあるような色気(密室サバイバル、密室心理推理バトル)がない、爆弾は推理のロジックそのもので惹きつける要素はないが、密室の感情のこもった心理推察バトルは迫力があって江戸川乱歩賞受賞本のような展開の強さが目立つ。

人物描写は三者とも明確に色がある。方舟は人物の特徴はないが各人の胸の内がわかりやすい、名探偵のいけにえは人物は一程度個性があって関心のベクトルは見えるがその胸の内がわかりにくい、爆弾は人物描写は独白混ぜて大いに語るし、台詞はかなりドラマ的。人と人とのやりとり、一人の人生を通した言葉のやりとりにこそミステリを置くところはドラマ的で、前者の二作品と爆弾の間には川が流れているように個人的には感じる。

オチは方舟が圧倒的に良い、正しく騙されていれば読み手を刺すようなテーマがある。名探偵のいけにえのオチは、推理そのものが楽しくエキサイティングである。犯行の動機も魅力的だ。爆弾はオチがわかっていたわけではないが、正直どこで驚くのか面白いのかわからなかった。

感想は読書の醍醐味である

ezioize.hatenablog.com

小説の感想はいろいろな切り口がある。方舟で語りたいと思うのは、やはりあのテーマについてと、またそのテーマ自体、物語はテーマをいかにして読み手に突き刺すのかということである。古今東西、名作ノベルゲームから映画、漫画、もちろん小説まで、いろいろなものから改めて考えてみたい。

面白いと感じなかった爆弾だって語れる、どうしてつまらないかなどという独善的でうざったい切り口などではなく、どうしてこれほど読ませるのか、や、犯人の思想に対するAnsを己たちで考えてやってもよい、この読感における江戸川乱歩賞感はどこからくるのかということを、証拠をあげつつ永遠に語ってもいい。

名探偵のいけにえは、個人的には動機にフォーカスするのは楽しい、序盤のある展開における登場人物の心情への違和感は語れる、人物描写のある種の不足か、あえて行間を作っているのか、あるいは推理する読者を揺さぶろうとしているのかはもう一作くらい作者の作品を読まないとわからないことだろう、あるいは謎解きのトリックにフォーカスして語るのがハードルが高いが本物の本格ミステリオタの楽しみだろう。

今日少し人と語り合うと火がついて、用事を済ませてる間もヴァンサバをやっている間もそんな風に、ぼっと考えていたりする。