ケーキの切れない非行少年たち
犯罪者となった青年達に会うと、そもそも認知能力が低い、感情統制が弱い、融通が効かない、不適切な自己評価、対人スキルの乏しさ、などなど、といった基本的な能力が人より劣っている、軽度な知的障害といっても良い特徴を持っている子も多いという。
彼らはその能力の低さ故に落ちこぼれていってしまうことによって犯罪へ近づくきっかけになってしまっており、著者がその落ちこぼれてしまう彼らに対する社会のサポート、支援について既存の方法や価値観などを批判的にそしていくつか提言していくのが主な論旨。
キャッチーでセンセーションのタイトルからだろうか、去年大ヒットした新書だ。昨日本屋を通ると40万部の帯が巻かれていた。
読んでいて、忘れていたような心地ながら「そりゃそうか」と思う。犯罪者というものは基本的には、残酷な事件のワイドショーのヒーローでもなければ、聡明なミステリの犯人でもラスコーリニコフでもない、ホールデンがライ麦畑で捕まえ役をやろうとしていることすら知らないような子達なんだろう。
ふと小学校の頃を思い出すとクラスで、暴力沙汰を起こす人達の大抵は、その基本的と言われる機能のかけた人たちだった。申し訳ないが彼らが犯罪を犯したと言われたらなるほどとは思う部分はある(いやスマン、俺小学校嫌いすぎかも)
著者はそんな子ら、反省以前の子には反省をさせようとしても尚更だめ、自尊心を持てではなく等身大の自尊心を身に着けさせようとすること、などなど提言してくれているのだけど、嫌悪しかない自分の小学校時代の思い出の悪童達に向けた言葉としては個人的には納得感しかない。
黒猫館の殺人
ある館の主人が、チャラケタ若者たちが館に泊まりに来てから、殺人事件が起きてしまうさまを赤裸々に綴った日記。
これを後日、事故によって記憶喪失となった日記の著者である館の主人と、おなじみ探偵とワトソン君とで読んで犯人と事件の真相を解き明かす話。
今回リーダビリティ高くて面白い。日記にあたる事件はシンプルながら先が気になってサッサ読める。この形式好きだ。しかもやっぱり館シリーズ、ちゃんと伏線張ってくれてることが解決編に入る前からわかる。ミステリ的にはおなじみなこのかたち、探偵が読者である自分と同じ情報で事件と接していることが明示されるから気合が入るんだ。
実際、読んでて、「うん?」と思ったところもあったから、わくわくしながら探偵の推理に入るところを読んだ。面白かった。
真昼の悪魔
どうしたって良心の呵責を感じることができない人間。文学的にはよく知られたあの人間。作中でも当事者によって散々言及されるドストエフスキーの悪霊で描かれるスタローヴギン、カミュの異邦人、な心持ちがテーマの医療ミステリ仕立ての話です。
なぜ私が悪魔なのかと問うと、あなただけのものではないのだと説得するアンサーがいるところがやっぱり遠藤周作っぽくてよかったです。
ミステリ仕立てな物語の中で、役割がすっかりサイコ探偵のヒーロー役な神父に笑います「ルシフェール」の絶叫はさすがに草。
医療ミスなどで医療が騒がれてた頃合いの週刊誌連載らしくどことなく社会性を感じなくもないです。スイスイ読めて楽しかったけど、ちょっと薄味遠藤節かも。
残酷な進化論
進化は進歩じゃない、ってことがこれほどまでわかりやすく読める本もそうないと思う。
章ごとにテーマがあって、生物、科学の専門用語はかなり出てくるんだけど論点がキチンとしてるから不思議なくらい頭に入る。目が滑らない。
目だって、心臓だって、決して進化の終点じゃない、ってことをとてもわかりすく説明してくれる。
ドーキンスは進化論の中でもネオダーウィニズムという主義であって、あの人はとても進歩的な思想だったことが改めてわかった。
「利己的な遺伝子」の自分の中での偉大さとかが色あせたわけじゃないけれど、この本を読むことで正しく距離を置くことができた気がする。
結構の数本出してる有名な著者っぽかった。やっぱり新書で少なさを感じなくもないので、もう一冊くらい読みたい。
最近の読書について
最近の話題、流行、とか全く追えてないことに気づいたので、新書に手を出し始めました。流行りの本って去年じゃねえかって突っ込まないで、去年は最近だよきっと。売れ線、新鮮で、読みやすくて楽しいね。
関係ないけど新聞読むのもマイブームになってます。読売です。ネットの記事とか、記事そのものよりどうしても記事のコメントに目が行っちゃうくせがついちゃってたから、解放されて楽しいのと、見るつもり無かった情報とかが入ってくるのが楽しいんだと思う。