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人生と仕事が伸び悩んでるWeb系のおじさん

唐突に読書日記2019年8月

山怪
ヤマケイ文庫 山怪 山人が語る不思議な話

ヤマケイ文庫 山怪 山人が語る不思議な話

 

実話だからこんなに色気がないのだろうか。それが怪奇であるかどうかはおいておくとしても、山の中でどうにも困った目に合うことには真実味を感じた。平均5,6ページほどの短い逸話の摩訶不思議体験を次々読んで、当人達の話では度々「狐に化かされた」と締めるんだけど、部外者の自分は「自然は恐ろしいな」と度々思う。

満願
満願 (新潮文庫)

満願 (新潮文庫)

 

読みやすいミステリ短編集。最初の短編、「夜警」なんかはとても面白い。読んでてどんどん引き込まれる。

わからなかった人の本性がミステリになる。古典部シリーズもどことなくそういうお話が多かった気がする。

世にも危険な医療の世界史
世にも危険な医療の世界史

世にも危険な医療の世界史

 

水銀飲めば便秘が治るとか、水銀蒸し風呂に入ると梅毒が治るとか、吐けば治るとかってアンチモンを飲んだり、皮膚にヒ素を塗ったり、寝かしつけたい赤ん坊にアヘンを飲ましたり、ラジウムが万能薬だって言ってがぶ飲みしたり、タバコが体に良くて浣腸タバコはもっと良いとか、とりあえず体調が悪い時は血を流せば良いってんで瀉血で大量出血させたり、麻酔がない時代の外科手術だったり、クロロホルムは体に良いとかって存分に吸い込んでバタバタ死んでったり、電気流せば良くなるとか、冷水浴びせてればよくなるとか、光だったり、磁気だったり、あるいはヤギの睾丸、人の肝臓をたb…

とまあ、医療が発達した今聞いていて、恐ろしくてたまらない医療行為の数々なんだけど、どうして水銀が身体に良いと考えたかというと水銀の神秘性に由来してたり、金が腐食しないのだから体に取り入れれば良いはずものだとか、糞便には毒があるから浣腸してでも排泄しないと体に害があると考えることとか、衛生環境がよくない昔の時代に水浴びに治療の意味を見いだす、とか、どことなく直感的で素朴な根拠が多いのは確かです。

バファリンというあの白い物体を飲み込んで、頭痛が収まることを期待することよりも、個人的にはずっと直感的な気がするんですが、この実感からは程遠い化学式の集約、この白い錠剤こそが、人類の英知なんですよね。バファリンの半分は英知

複雑な動物の身体や、繁殖の仕組みなどに触れて、どうしても多くの人が「神が生物を作った」と考えてしまいがちなのは、「進化にかかった途方もない年月というのは人間の生活レベルに似た例えなど全く存在せず、それだけ生物の進化を想像することは難しいからだ」、という説明を進化生物学者ドーキンス氏がしていた気がします。人体や物質と、直感的に考えることができるものと、そうでないものの区別はきちんとしないといけないですね。

そんなこんなで、こちら、本文は不謹慎さすら漂うブラックなユーモアたっぷりで、読んでて楽しい文章です。さっき言った直感的な考えも、現代に通ずる健康詐欺に通ずるものがあって、とても示唆的です。痛い話もかなり多いけど、これは今月読んだ中ではダントツに楽しい本でした。オススメです。